アラスカ、フェアバンクスで暮らす、親分とその子分達(キヨシ君:夫、サブ子:娘、栄作:息子、そして飼い犬 Maxine) の日常を綴ります。
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Posted by 親分
 
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思いがけない贈り物
風邪で絶不調のキヨシ君に容赦無くサブ子の子守りを頼み、今日も仕事に出てきました。いつものように搾乳のための10分間の休憩さえ取れずにバタバタと働いていると、同僚が「親分、ここ終わったらナースステーションに来てくれる?親分に会いたいって人が待ってるみたいだから。」と声をかけてきました。内心、「このクソ忙しい時に限って、いったい誰だ?まだ乳絞りの時間さえ取れてない、って言うのに!」とプリプリしながらナースステーションに戻ってみてびっくり!そこには、Jさんの奥さん、Bさんが立っていたのです。

糖尿病、腎不全、その他様々な慢性疾患に苦しみながら一進一退を繰り返していたJさんとは、私が3年以上も前に今の職場でCNA(看護助手)として働き始めたころからのお付き合いでした。糖尿病の合併症から両足を切断し、腎障害まで起こして透析にも通わねばならず、ケア的には結構手のかかる大変な患者さんではありましたが、Jさんのユーモアにはいつもこちらの方が助けられていたような気がします。

両足を太ももから切断されてしまっているためにトイレまで歩いて行くことが出来ないJさんも、ベッドの上で用を足すことだけはどうしても避けたいようでした。でもそんな彼をベッドからポータブルトイレに移動したりベッドに戻したりするには結構な力とテクニックと時間を要しました。私が初めてJさんの介助に付いた時、彼と奥さんのBさんは「あんたのようなチビッ子じゃ無理だよ。もっと力の強そうなナースを呼んできたら?」と頼りなさ気に言ったものです。「私、こう見えても実は結構力あるんです。」と引かず、結局Jさんの移動を難なくこなした私に2人はようやく一目を置いたようで(笑)それ以来「親分は扱いが丁寧だから移動させられても痛くない。」と良く私を指名してくるようになりました。(アメリカ人ナースには手荒な人が多いからねぇ~。苦笑。)毎日Jさんのポータブルトイレへの移動を介助する傍ら、その合間にJさんと奥さんのBさんにどうして私がアラスカに来たのか、なんで看護師になったのか、そんな話を聞かれるままにお話するのを、私も半分楽しみにしていたものです。

ところで、Jさんの移動の度に私とJさんの奥さんは「One, Two, Three!」と声をかけながら息を合わせてやっていたのですが、ある日突然Jさんが「Are you ready? イチ!ニ!サ~ン!」と日本語で声をかけたのにはびっくり。余りの可笑しさに私はJさんの奥さんとタイミングを合わせられず、あやうくJさんをベッドからずり落としそうになってしまったこともありました。(本当に落ちなくて良かったよ・・・。)そうやって人を笑わせることが本当に大好きなJさんではありましたが、時には自分の予後に対する不安や苛立ちを隠し切れずに奥さんに当たりちらすこともありました。ある日、廊下で涙ぐむ奥さんに「こまったJさんですね。」と苦笑いしながら声をかけると、奥さんは「もうあんな人知らない!親分、今夜は私付き添いしないから、ってJに言っといて!頼むわね。」とプリプリ猫の待つ自宅に帰ってしまいました。「奥さん、怒って帰っちゃいましたよ。毎日毎日熱心に看病してくれているBさんにいじわるしちゃダメじゃないですか。」と冗談半分で言った私に、Jさんが「わかってるよ・・・。」と寂しそうに笑ったのが忘れられません。

私が産休を取っている間に、Jさんはとうとうお亡くなりになってしまいました。最後はBさんが「もう夫は充分がんばったから、最期は家で静かに逝かせてあげたい。」と退院させて自宅へ連れ帰り、その一週間後に息を引き取られたという話は同僚から聞いていたのです。

そして、今日。Bさんはナースステーションで笑顔で私を待っていました。「亡くなる前に、Jに『親分に赤ちゃんが産まれたそうだから、プレゼントを渡すのだけは忘れるなよ。』ってしつこく言われていたの。」と。Bさんは思わず泣いてしまった私を抱きしめて、「親分、ありがとう。親分はあの人のFavoriteだったのよ。」と言いました。プレゼントを開けると、それはBさん手編みの赤ちゃん用毛布と、大量のお尻拭き&オムツかぶれ用クリームでした。

「Jさんは苦しまずに逝きましたか?」と聞いた私に、「ええ。最期までジョークを言って皆を笑わせていたわ。」と答えるBさん。「それならいいんです。」とまた言葉に詰まっていると、Bさんは「Jは自分の葬式だけは絶対にしてほしくない、って言っていたの。だから今度Jの人生をお祝いする会、っていう名目でピクニックをするから親分もぜひ来て欲しいの。」と言われました。「Jさんらしいですね。」「まったくでしょ?」と2人で泣き笑いをし、そしてBさんが持ってきたお2人の若かりし頃の写真を見てまた2人で笑いました。「足があった頃は本当に背が高くてカッコ良かったのよ。」「足が無くても十分いい男だったじゃないですか!」などと言い合いながら。

亡くなる前にもう一度会えたら良かったのに。娘が産まれたんです、超!安産でした、名前は~~~です、日本語で、ダンシング・スノーという意味なんです、と報告したら、Jさんはきっとあのヒゲ面をくしゃくしゃにして自分のことのように喜んでくれたことだろう。そう思うと悔しくて仕方がないのですが、その反面、あんな素敵な人とその奥さんの人生に触れられた、というその事実を前に、私はやっぱりなんてラッキーな仕事をしているのだろう、と思わずにはいられないのです。
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Posted by 親分
comment:10   trackback:0
[ナースのお仕事
comment
ありがとう
泣けた。
自分の関わった大切な人たちを思い出した。
勉強疲れたとか言って、だらだらネットサーフィンしてた自分が恥ずかしい。
くっそー、わたしも頑張るぞい!!
だから親分のぶろぐ、好きなんだよねえ。。。
2006/06/03 19:22 | | edit posted by きゃらはん
ただただ。。
泣けて泣けて、最後まで一気に読めませんでした。

私の父も糖尿病です。10日ほど前に低血糖を起こして入院し、インシュリンの調節をしてもらっています。父は右半身が不自由なのですが、親分さんのような看護士さんにお世話していただいているといいな、と心から思います。

2006/06/03 19:25 | | edit posted by すぬこ
泣かされちゃった
泣いてしまいました・・・。
ドラマですね。
親分さんの仕事に一生懸命&丁寧なのはきっとみんなを癒してるのでしょう。これからも人との出会いを大切に頑張ってくださいね。

Mrが破水したよ。
2006/06/03 21:30 | | edit posted by たまちゃん
貴重なお話
きっと、Jさん、サブ子ちゃんのこと、見守ってくれるでしょうね。素敵な出会い、羨ましいです。

「おじいからの手紙」を読んで、うちの母親泣いたそうで…
本名を教えたのに、「親分、親分…」って呼んでます(笑)。

今日は冷えましたねぇ、体には気をつけて!





2006/06/03 22:48 | | edit posted by Nango
親分さんこんにちは。ブログにお邪魔するのは初めてです。
某アメリカナースコミュで“もも&かんたママ”と名乗っていて、そちらでもお世話になっています。

私も泣きそうになりながら今日の日記、読ませてもらいました。
そこまで親分さんがJさんのFavoriteになれたのは、親分さんの看護師としての能力と、そして人徳のたまものでしょうね。
私も日本でも、アメリカでも、そんな風に患者さんの心にも寄り添える看護師になりたいと思います。
2006/06/04 04:48 | | edit posted by Harumi
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2006/06/04 07:49 | | edit posted by
ありがとうございました。
素敵なお話、ありがとうございました。とっても心が洗われました。

素敵なお仕事をされていると思いますよ。私の友達にもナースの人が居ます。高校時代からの友達で宣言通り、ナースになりました。なかなか苦労の多い職業ですが、細々とでも良いので続けてくださいね!

親分さんのようなナースさんが増える事を祈ってます!!!
2006/06/04 09:08 | | edit posted by なおっぺ。
きゃらはんさん>
ナースの経験のある人には、誰にもこういう大切な患者さんとの思い出ってあるよね。だからいつもは「忙しい~、大変~!」とブーブー言いながらも(笑)やめられないんだろうね。
私もきゃらはんさんがいつの日かこちらの地でもまたナースとして働ける日を心待ちにしています。CGFNS&NCLEXの受験勉強には付き合いますよ!サブ子同伴で良ければ・・・。(はたしてちゃんと勉強になるのだろうか。)

すぬこさん>
糖尿病は一生付き合っていかなくてはいけない病気なのでやっかいですよね・・・。合併症を起こさないように、血糖値をとにかくコントロールしていくしかないのでしょうが、それが言うほど簡単じゃないし。ご家族も食事管理とか低血糖・高血糖発作の時の対応なんかで大変でしょう。
でもそういう病気を克服というか付き合っていく中で、健康だった時には思いもしなかったこととか考えもしなかったことを経験できる、そういう毎日に私は看護師としてのやりがいを見出しているのだと思います。

たまちゃん>
ドラマでしょう?ERのような派手なドラマはないですが、内科病棟にだってこういうじ~んと来るようなドラマはたくさんあるんですよ。
それよりも!Mrさん!もう産まれてるのかしら?実況中継お願いしますよ。

ナンゴさん>
なんでナンゴ母「おじいへの手紙」で泣いてんの?!(笑)泣かせるような話じゃなかったと思うけど・・・。やっぱり孫を思う気持ちが良くわかるからでしょうねぇ~。もういいです、親分と呼んで下さって。
昨夜はホント冷えたねぇ~。今も寒いし。風邪には気を付けて!


Harumiさん>
初コメントありがとうございます。ナースのお仕事はこういう出会いがあるから面白いですよね。私もきっと一生辞められないと思います・・・。お互い、がんばりましょうね!これからもよろしくお願いします。

匿名さん>
素敵なお話をありがとうございます。お返事をしたいのでメールアドレスを右下のメールフォームから教えていただけるとうれしいです。

なおっぺさん>
私も小さな頃は「大きくなったら看護婦さんになりたい!」と言っていた友人の気持ちがさっぱりわからない、と思っていた口だったのに。今ではどっぷりはまっています。ナース以外のお仕事はきっとしたくない、というか出来ないだろうなぁ・・・。
そういう仕事に巡り会えた自分は本当にラッキーだなぁと思います。



2006/06/04 11:25 | | edit posted by 親分
はじめまして
mixiからお邪魔しました。
とっても素敵なサイトにたどり着いたようです!
鼻水が。。。(このお話し感動しました!)

私はワシントン州在住で、RNを目指しています。
元気をありがとうございました。
またお邪魔します。
頑張ってくださいねー☆
2006/06/05 00:21 | | edit posted by Bloomquist
Bloomquistさん>
初めまして!mixiからいらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

ワシントン州でRNを目指していらっしゃるとのこと。ぜひぜひ免許を取得できるよう影ながら応援しています。がんばってくださいね。これからもどうぞよろしくお願いします。
2006/06/05 12:21 | | edit posted by 親分
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