アラスカ、フェアバンクスで暮らす、親分とその子分達(キヨシ君:夫、サブ子:娘、栄作:息子、そして飼い犬 Maxine) の日常を綴ります。
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Posted by 親分
 
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Cheetosが大好きだったHさん
うちの病棟への入退院を繰り返していたHさんという患者さんがいます。70代で、口が悪くて、頑固じじいで、石頭。ナースコールなしでも怒鳴り声がナースステーションまで届いてくることで有名でした。

最初は皆頭ごなしに怒鳴られるので「なんだ、このじじい!」と思うのですが(だって自己紹介をしただけで怒鳴られたりするのです。苦笑。)、Hさんにはどうしても憎めないところがあり、すぐに皆彼独特のユーモアのとりこになってしまいます。

Hさんの憎まれ口に最初からひるまず、常に言い返していた私を彼は気にいったらしく、「おい、チャイニーズ!」とか「おい、タイワニーズ!」とか、「おい、フィリピーノ!」とか、何かと私にちょっかいを出してくるようになりました。「ジャパニーズだってば!それから私の名前は~~~だって何度も言ってるでしょう?」と何度教えても「何回言われても覚えられね~んだよ!なんでもいいだろ、同じアジア人なんだから!Close enough!とにかくお前はSweetheartだよ!」とかワケのわからないいい訳をされていたのですが、私はそんなHさんが大好きでした。

若い頃は大工だったというHさん、私が「夫が来年省エネハウスを建てる、って今色々勉強してるんだ~。」と教えると「おい、お前今度その旦那を連れて来い!俺が色々教えてやるから。必ずだぞ!」と言います。あんまりしつこいので休みの日にキヨシ君を病棟に連れて行って会わせたことがあるのですが、Hさんは急に別人の様になってカス・ワードなど全く使うこともなく、「やさしいおじいさん」を気取ってキヨシ君に色々アドバイスをしているのには笑ってしまいました。前日私が「わかったよ、じゃあ明日連れてくるよ。」と言った時には「Can I beat him up?(俺がぶちのめしてもいいか?)」なんて言っていたくせに。

キヨシ君に向かい、Hさんは「あんたはいい嫁さんをもらったよ。大切にしろよ。」なんてまるで父親のような言葉までかけていました。

そんなHさん、明日の老人ホームへの転院を目前に、今日の午前中に急変してなんと亡くなってしまったのです。突然の死でした。今朝もナースステーションまで「ガッデム!」という勢いのいい彼の怒鳴り声が聞こえてきていたというのに・・・。

そういえば数日前、休日にサブ子連れで彼の部屋を訪れてじっくり話をしていた時のこと、Hさんはサブ子をうれしそうにあやしながら(彼は赤ん坊と動物にだけはめちゃくちゃやさしいのだ。笑。)「俺は老人ホームになんか行きたくね~んだよ!(一人暮らしをしていた)自分の家に帰って、猫と鳥に囲まれて死ねたらそれが本望だ。人様に面倒をみてもらうなんてまっぴらごめんなんだよ。死んだほうがマシだ。」と言っていたのを思い出しました。

今朝も「具合が悪い」とは言いつつ、いつもの様に悪態をついたり冗談を言ったりしていたHさんは、ベッドサイドのポータブルトイレを使ってベットに戻った直後に急変したのです。私は今日はチャージナースを勤めていたため、HさんのケアはHさん担当のナースに任せ、ドクターやナーシングスーパーバイザーやご家族との連絡をとることに時間を取られていました。そうしている間に、彼は本当に「ぽくっと」逝ってしまったのです。あっという間の出来事でした。

Hさんの担当ナースと共に、死後の処置をしていた時のことです。Hさんのベッドサイドテーブルの上にあるCheetos(チーズ味のスナック)の袋が目に入りました。HさんはCheetosが大好きでした。私を見つけるたびに、「おい、お前今日も忙しそうだな。昼飯は食ったのか?ちょっとそこのカーテンをしめて、ここに座ってこれ食っていきな。」といたずらッ子のような目をして袋ごと私に差し出したものです。カーテンを引いてHさんの隣に腰掛け、「同僚に見つからないように、2~3分だけね。」とCheetosを口の中に押し込んでバリバリ食べる私を相手に、Hさんは眉毛を上げたり下げたりマンガのような顔をしながら、おもしろおかしい話を聞かせてくれたものです。

死後の処置を済ませ、HさんのCheetosをゴミ箱に捨てながら、私は涙をこらえるのに必死でした。Hさんらしい最期だった、どうしても老人ホームには行きたくなかったんだ、できたらもう一度大好きだった猫と鳥に会わせてあげたかったな、「旦那をまた連れてこいよ。」と何度も言っていたのに、どうしてキヨシ君をもう一度連れて来なかったんだろう、いろんな思いが頭を過りました。

Hさんは昨日、夜勤のナースにこんなことを言っていたそうです。「俺はもうすぐ死ぬよ。わかるんだ。はやく天国にいる2人目の奥さんに会いたいなぁ。1人目と3人目には会いたくないけど、2番目の嫁には会いたいなぁ。」と。若い頃はきっとモテモテだったのでしょう。しかし3度も結婚していたとは知りませんでした。(笑)今ごろ、Hさんは2番目の奥さんと天国で仲良くしているのでしょうか。

Hさん、素敵な思い出を本当にどうもありがとう。Cheetosを見るたびに、私はHさんのことを思い出すでしょう。
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Posted by 親分
comment:13   trackback:0
[ナースのお仕事
comment
また・・・
また泣かせてくれましたね・・・。
本当にそこはいつもドラマがありますね。
そのHさん、とっても味のある人だったんでしょうね~。
なんか、普段は口悪い事いっても心は温かい・・・そんな人ですね。本当憎めないタイプだ・・・。

これから、チートス見るたびに思い出しちゃうでしょうね。
2006/09/10 21:46 | | edit posted by たまちゃん
読みながら思わず涙をこらえてしまいました。

私が何気なく食べるチートスにも親分さんにとっては思い出深いストーリーがあるんだなぁ。

患者さんと接している親分さんの話を聞くたびに自分ももっと広い心で人に接しなくてはと反省します。
2006/09/10 23:18 | | edit posted by miz
最初日記のタイトルを見たとき私のことかなと思っちゃいました。
私もチートス中毒のHなので。

私も親分さんの日記を読んでてウルウルきてしまいました。
この職業についてると患者さんの死に立ち会うことって多いですが、いつまでたってもこれだけはなれませんね。っていうか慣れたらおしまいと思ってるんですが。

私にも忘れられない、とてもいたずら好きだった患者さんがいるんですが、その患者さんは亡くなった後もいたずらをしてから天国に行ってしまいました。(誰もいない廊下の電気が突然消えるという出来事がその患者さんの亡くなった夜に二回も起こったんです。)

色々な患者さんの思い出を糧にしてもっと一人一人に思いやりを持って接しなきゃ駄目だなと親分さんの日記を読んでいて改めて感じました。



2006/09/11 02:20 | | edit posted by Harry
私が今までに会ったお医者さん、看護婦さんって結構いそがしオーラを放っていました。なので聞きたい事も聞けず、親しくなるわけでもなく(日本での妊婦時代ね)・・・・。きっと親分さんはそんなオーラははなってないんでしょうね。だからチートスに誘ったり、旦那連れて来い何ていえたんですね。Hさんはキヨシ君、サブ子ちゃんに会えて本当嬉しかったと思いますよ。(あの笑顔たまりませんもの)
病院で働いている親分さんのこういう話を聞くと「家族も自分も周りの人も大事にしなきゃ」って思います。
2006/09/11 08:18 | | edit posted by coco
泣いてしまった。Hさんみたいなおじいさん凄い好き。サブ子ちゃんにキヨシ君にも会えて嬉しかったでしょうねHさん。そして、休日に会いに行ってた親分さんファミリーの事を大好きだったと思いますよ。
天国で2番目の奥さんとCheetos一緒に食べれたら良いですね。
2006/09/11 10:25 | | edit posted by Mr
Hさん、親分やキヨシくん、さぶこちゃんと会えて、よかったね。
行きたくなかった老人ホームに行かなくて、よかったね。
親分さんも、Hさんと会えて、よかったね。
2006/09/11 11:48 | | edit posted by きゃらはん
何かの本に(多分ホスピスの)『人生のスタートは自由には出来ないけど人生の最後は自分の思ったように自由にしていいんだよ』ということが書いてあった。
生まれる時には生まれた家・両親なんかを選択することは出来ないけど、死ぬ時には自分が納得した時間を自由に過ごすことができるんだよって言う意味だと思う。

Hさんのように突然亡くなる方って、多いですよね!?患者さんって本当に自分の死期というか、最後をわかっているんじゃないかな?っておもう事がよくある。
医療者としてはなんで?まだ頑張れるのに?と感じることも多いけど、患者さんにとってはその時が自分の選択できる死期なんだろうな?と最近考えるようになりました。
Hさんは老人ホームで最期を迎えるのではなく親分さんのもとで最期を迎えたかったんだろうな?と思います。
2006/09/11 17:36 | | edit posted by あーちゃんのかか
たまちゃん>
>なんか、普段は口悪い事いっても心は温かい・・・そんな人ですね。
全くその通りでした。皆に「まったくあの人は・・・」と言われつつも、愛されていた人でした。Hさんのような人と出会えるというのも私がナースの仕事を続けていける理由の1つです。

mizさん>
目が悪くて(ほとんど視力がなかったので)Cheetosの袋がどこにあるかわからないHさんでしたが、「Cheetos、どこにある?」と聞いてナースに渡してもらうたびに、「グフフ」でもない「グヘヘ」でもない声を出していたのを思い出します。よっぽど好きだったんでしょう。ちなみに歯もなかったので、歯茎で食べてました。Hさん・・・。

Harryさん>
Hさんもそう言えばCheetos中毒でしたね!あの体にわるそ~なオレンジ色がまたなんとも言えず美味しそうですもんね。
ナースの仕事をしていると、どうしても忘れられない患者さんというのがいるものですよね。Hさんは私にとって間違いなくそんな患者さんの一人です。
患者さんの亡くなってからのいたずら・・・。こういうことって本当にありますよね。でもそういうことをキャッチできるのは、その患者さんのことを生前良く知っていたHarryさんのようなナースだからこそ、というのもあるんじゃないでしょうか。
お互い、素敵な仕事に就けて幸せですね。

cocoさん>
私も実は日本でナースをしていた時代(ERとICUで働いていたんです。)、いそがしオーラを放たずにはいられず、そんな自分が本当にイヤでした。今は全く雰囲気の違う内科病棟で働いているので、忙しいことは忙しいのですが患者さんと親しくなるのに充分な時間はそれなりに取れます。そこが1番今の職場で気に入っている所です。
本当に、大切な患者さんの死に直面する度に、1番大切なものって何だろう、家族や友人を大切にしなくちゃ、って思いますね。

Mrさん>
Hさん、Mrさんのようなキャラなら絶対にウマが合いそう!本当に口は悪いけど心の暖かい人でした。今ごろ2番目の奥さんだけでなく、1番目と3番目の奥さんにもつかまって、またカスワード連発してなければいいんですが・・・。

きゃらはんさん>
Hさんが逝ってしまって寂しいことは寂しいんですが、やっぱりHさん自身はこれで満足しているのかな、と・・・。どこまでも頑固なHさんらしい最期だったな、と思います。私もHさんのような人の人生の最後にちょろっと登場できたというだけでも、本当にラッキーでした。これだからナースの仕事は辞められないよね。

あーちゃんのかかさん>
確かにその通りだね。ただ、今回は「どうしても家に帰って一人暮らしを続けたい」というHさんの意見は、息子さんや親しい友人達の「それは危ないから(Hさんは目も良く見えないし、歩行も危なっかしいし、皆転倒を恐れていたのです。)ダメだよ、老人ホームならもし何かあってもすぐ見つけて対応してもらえるから。」という理由で受け入れられなかったのです。今考えると、自宅で一人でいる時に転んでそのまま死んでしまっても、Hさんはそうして一人で誰の助けも得ずに飼い猫と鳥に囲まれて死にたかったんじゃないかな、もしそうならそうさせてあげた方が良かったんじゃないかな、とも思ったりするわけです。
難しいですね。
2006/09/11 18:30 | | edit posted by 親分
大好きな患者さん
この方のことだったんだ…。
なんと威勢いい方、「God damn it!」って(笑)。

Hさんにとって、病院での親分さんとの交流が楽しみだったのだろうねぇ。素敵な出会いがあって、逝ってしまう現場に何度も遭遇する、すごいお仕事だと思う。

がんばってね!
2006/09/11 21:45 | | edit posted by Nango
親分さん、こんばんは。

読んでいてジーンときました。看護婦さんというのは大変な仕事だけど、ほんとに素敵な仕事ですね。

「とにかくお前はSweetheartだよ!」っていう言葉、なんだかうれしいですね。

看護婦は親分さんの天職だなぁと思いました。
2006/09/12 23:20 | | edit posted by Tamiko
Nangoさん>
そうです、この方のことです。素敵な人とたくさんの出会いがあって、そのことに関しては本当にラッキーな仕事をしているなぁと思います。ただ、そうして親しくなった人に亡くなられてしまうというのは本当に慣れません。上でHarryさん(イギリスでナースをされています。)もおっしゃっているように、慣れたらお終いなんですけどね。

Tamikoさん>
ホント、普段は口が悪いくせに時々そういうことを言われると「なんだ、いじわるじじいだと思ってたけどかわいい所もあるじゃん」と・・・。Hさんの思うつぼ。(笑)
看護師の仕事は本当に奥が深いです。何年経っても、新しい発見がつきません。そんな仕事に巡り会えた自分はラッキーだなぁと自分でも思います。
2006/09/14 18:24 | | edit posted by 親分
Hさんは。。
読んでてこみあがるものがありました。

Hさんは、親分さんに会えて、サブ子ちゃんとキヨシ君に出会えて本当にうれしかったと思います。心が通い合うナースさんが側におられて安心して逝かれたのではないでしょうか。


2006/09/15 04:27 | | edit posted by すぬこ
すぬこさん>
Hさんがどういう思いで最期を迎えられたのか、それは本人にしかわからないことかもしれませんが、少なくともそれなりに満足のいくものだったことを願うしかありません。

私もHさんと出会えて本当に良かったと思っています。
2006/09/15 20:37 | | edit posted by 親分
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